17Wはどこで減った? ENVE Melee V2の「Real World Fast」

前回は、初代Meleeのタイヤ幅が最大35mmだったのに対し、Melee V2が最大33mmへ絞った理由を紹介しました。

今回は、Melee V2がどのように軽さと空力を改善したのか、9月15日の展示会で聞いた内容から紹介します。

ENVEが発表している、Melee V1からの空気抵抗削減量は17Wです。

ただし、これはフレームだけで17W速くなったという話ではありません。

ENVE Melee v2のReal World Fastプレゼンテーション

「最軽量」ではなく、実際に走ったときに速い

展示会で印象に残ったのが、「Real World Fast」という言葉です。

説明のスライドには、こう書かれていました。

「最軽量」ではなく、“実際に走った時に速い”ための軽量化。

自転車だけを風洞に入れれば、フレーム単体の空力性能は測れます。しかし、実際に走るときには人が乗り、脚が動き、ボトルやボトルケージも付いています。

Melee v2は、メルセデスAMG・ペトロナスのシルバーストーン風洞で、実際のライダーを乗せて開発されました。ライダーの姿勢や脚の動き、ホイール、ボトルまで含め、ひとつのシステムとして空気の流れを考えています。

17Wは、どこで減ったのか

ENVEが発表している内訳は、次のようになっています。

  • フレーム、フォーク、シートポスト:11.4W
  • 新型ハンドルとバーテープ:3W
  • エアロボトルケージ:2.6W

合計で17Wです。

エアロボトルケージは、一般的な丸型ボトルを使ったまま、ボトルとケージを装着することで生じる空気抵抗を抑える設計です。ここで2.6Wを削減しています。

ENVE Melee v2に装着されたSES Aero Bottle Cagesとボトル

フレーム、フォーク、シートポスト、ハンドル、バーテープ、ボトルケージ。それぞれで空気抵抗を少しずつ減らし、実際に走る状態での速さにつなげています。

どこか一部分だけに極端な形状や無理な削減を求めるのではなく、必要なものをすべて付けた状態で全体として速くする。この積み重ねに、ENVEの言う「Real World Fast」を感じました。

これは、フレームだけでなく、ハンドル、シートポスト、ボトルケージまで自社で開発し、製品として揃えているENVEだからこそできたことだと思います。

ひとつの部品だけを見るのではなく、完成した自転車全体をひとつのシステムとして設計できる。それがENVEの強みかなと思いました。

新型ハンドルも空力の一部

V2と同時に発表された、新型SES Aero Pro V2 One-Piece Handlebarも、この考え方をよく表しています。

トップ部分は、薄い翼断面形状になっています。

竹之下が持つENVE SES Aero Pro V2 One-Piece Handlebar

ドロップ部分には、形状に合わせた専用パッドを装着します。このパッドは空気の流れを整えながら、振動吸収性も高めるものです。バーテープは厚さ1.2mmで、ドロップの4分の3を巻く設計。ハンドルとバーテープを組み合わせることで、ライダーを乗せた風洞試験では従来より3Wの空気抵抗を削減しています。

ENVE新型ハンドルのドロップ形状と専用パッド

エアロになったのに、フレームは軽くなった

エアロロードは速いけれど重い。軽量ロードは登りに強いけれど、空力では不利。

これまでは、どちらを優先するかを考えて選ぶのが一般的でした。Melee v2は、その二つを同時に改善することを目標にしています。

UL Blackカラーの56サイズは、フレーム単体で791g。フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト、スルーアクスル、ディレイラーハンガーを含めても1,442gです。

SRAM RED相当の仕様なら、56サイズの完成車でUCI最低重量の6.8kgを狙える設計になっています。

T47からBSAへ。ヘッドベアリングも小型化

軽量化は、カーボンだけで行われたわけではありません。

ボトムブラケットは、初代のT47から、より小さく軽いBSAのねじ切り式へ変更されました。

ENVE Melee v1のT47ボトムブラケット周辺

ヘッドチューブも細くなっています。そのために、上下のヘッドセットベアリングを小型化。重量を減らしながら、前面投影面積も小さくしています。

ENVE Melee v2のヘッドチューブとフォーク正面

シートポストも新しい専用品です。従来より28g軽くなり、サドル調整のしやすい2ボルト式になりました。

ENVE Melee v2の専用シートポスト

リアエンドは、専用のディレイラーハンガーから共通規格のUDHへ変更されています。転倒などでハンガーを傷めた場合にも、交換部品を入手しやすい実用的な変更です。

大きな一か所だけで重量を落とすのではなく、細かな部分を見直して少しずつ軽くしていることが分かります。

ENVE Melee v2のダウンチューブ、BB、リア三角

サイズごとにフォークも変えている

Melee v2は47、50、52、54、56、58、60cmの7サイズを展開します。それに対して、フォークオフセットは55、51、47、43、39mmの5種類です。

フレームサイズが変われば、同じフォークを使ってもハンドリングの感覚は変わります。そこでENVEは、サイズに合わせてフォークオフセットを細かく設定しています。

小さいサイズでも大きいサイズでも、Meleeらしい反応の良さを狙った設計です。

さらに56〜60cmでは、フレーム側で5mm、新型ハンドル側で6mm、合計11mm低いポジションを取れるようになりました。

このあたりにも、快適性優先ではなく、レースバイクとして作られたMelee V2の性格が表れています。

展示会で撮影したENVE Melee v2完成車

フレームだけの17Wではない

Melee V2の17Wという数字を見ると、フレーム形状の大きな変化を想像するかもしれません。

実際には、フレームだけで一気に削った数字ではありません。ハンドル、バーテープ、シートポスト、ボトルケージまで含め、細かな改善を積み重ねた結果です。

実際に人が乗り、ボトルを付けて走る。その状態で速くなることを考える。今回の展示会でMelee V2を見て、ENVEの「Real World Fast」という言葉の意味が、以前よりよく分かった気がします。

ENVE Melee V2は、フレームセット792,000円(税込)。グランピーでもオーダーの受付を開始しています。サイズ選びやパーツ構成についても、店頭でご相談ください。

展示会の様子はYouTubeでも紹介しています

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